フルサスのベアリング打ち替え Levo SL / MTB Suspension Bearing Removal & Installation

自転車

フルサスマウンテンバイクのベアリング打ち替えをしてみました。
走行距離は1000km、2年くらいトレイル中心でたまにゲレンデ行ったりとガシガシ使っています。平地を走ることはほぼ無く、だいたい登ってるか降っている感じの使い方です。

日本語のサイトでここまで解説しているサイトは無いです。
海外サイトも工具の使い方の解説はありますが、ここまで細かく解説しているところは見当たりませんでした。
ほとんどの方がプロのMTBショップに依頼しており、プロショップはここまで細かく公開していないため情報が少ないのかなと思っています。
真似される方はカーボンが欠けたり、割れたり、樹脂にヒビが入ったり、塗装剥げたりとリスクが伴う作業がであることを御理解の上、作業をお願いします。(一箇所、表面の樹脂を割ってしまいました。。。)

工具

いろいろと特殊工具が必要です。

  • 内掛け式のベアリングプーラー
  • パークツールの自転車用 ベアリングリムーバー
  • 塩ビパイプ
  • Cクランプ

パークツールの工具だけでいけるかと思いましたが、特殊な箇所はあれやこれやと工夫して取り外しと圧入が必要でした。

オートバイで使っていたベアリングプーラーがこんなところで役に立ちました。塩ビパイプはサイズが豊富でスペーサーや打ち抜き時の受けとしても万能です。適度な強度と樹脂の加工性の良さ、柔らかさが絶妙です。あと値段が安い!


Park Tool SBK−1 SUSPENSION BEARING KIT
リンクベアリングの打ち替えキットです。なかなかの値段しましたが、自分でフルサス車のOHを数回やれば元が取れるので買ってしまいました。Amazonで6万円弱していますが、もっと安く入手しました。今は値上がりしてので5万以上するかも。。。

詳しい使い方は後で書きますが、スリットに磁石が仕込まれていてネジを回さずとも位置決めができます。プロ用なので作業効率が格段に高いです。毎回ねじ込み、ネジ戻しをやるのと比べるとすごい楽です。また、パークツール製なので安定の質感で、所有欲を満たしてくれます。

PARKTOOL(パークツール)
¥57,228(2024/12/21 18:17時点)

内掛け式のプーラー
STRAIGHT:パイロットベアリングプーラーセット


塩ビパイプ ホームセンターで色々なサイズが売っています。100円前後とお手頃価格。加工性が良い。

ベアリング

ベアリングのサイズや種類はバイクによります。
スペシャライズドはマニュアルにサイズと型番が書かれていますが、一箇所サイズの記載ミスがありました。
時間に余裕があれば、一度ばらして実際の寸法を測ってから購入する方法が確実です。

スペシャのLevo SLは両側接触形(LLU)のシールドベアリングでしたので、相当品をモノタロウとAmazonで調達しました。
ベアリングの値段も一昔前と比べて倍くらいなりましたね。。。1個500~600円くらいでした。1台で部品代が8000円くらいです。

今回はステンレスではなく、SUJ材(高炭素クロム軸受鋼鋼材)のものを購入してしまいました。マウンテンバイクのような泥汚れがついて頻繁な洗車を行うような乗り物はステンレスのベアリングを選んでおいた方が無難です。SUJ材もクロムが入っているので多少の耐食性はありそうですが、耐食性に特化したステンレス系のベアリング鋼もあるようなので断然そちらがおすすめ。

↓Levo SLに最初からついていたベアリング
S&S社? 6801V-RS
S&Sは台湾のベアリングメーカーのようです。

↓日本にいるなら安価に手に入って安心の日本メーカーが無難。わざわざ高い海外製や、謎の中国メーカーなどは使う必要ないですね。日本メーカーの中国製と中国メーカーの中国製では品質管理に差があるので。。。

自転車の分解

ベアリング交換作業

パークツールのベアリング交換ツールを使います。
打ち抜き作業時はベアリングの「内輪」を押して打抜きます。
ベアリングの「外輪」よりも大きな「受け」の部品がありますので、押し、受けをセットで使用します。

LINK (リンクブラケット)

↓まずはリンクブラケットから作業します。マニュアルには英語で「LINK」とだけ書かれてました。


左が打抜き工具12mm、右が受け側の工具22mm


ベアリングの内輪に打抜き工具をはめて、シャフトを通します。
これでハンドルを回していくと簡単にベアリングが抜けます。カラーとかブッシュとかボックスレンチのコマとかあれば作業できますが、色々な箇所に対応したり作業の効率を考えると専用工具が超簡単です。


抜けました。こんな感じでベアリングの内径に押し出し用のコマがフィットしています。更にシャフトがコマの中心を通ることで治具全体の芯出しをしています。
抜くときはあまりセンターが気にならないのですが、圧入時はセンターがズレていると斜めに入ってしまい破損する恐れがあるため、「芯が出いている」ということは非常に重要です。
この治具を使えばある程度の芯出しは容易に行えます。あとは作業者の技量でしょうか。


↓これもベアリングを抜いているところです。
よく見てもらうとシルバーの厚めのワッシャーを2枚使っています。
これは受け側のコマが接触する面がフラットではないため、ワッシャーをフラット面に当てて嵩上げをしています。
先程の「芯が出ている」に関連して、押し、受けのコマの接触面がフラットになっていないと適切に作業できないのでこのように工夫しています。
他にも高価な治具を買えば簡単なのだと思いますが、この辺はDIYで部品を作ったり、ワッシャ噛ませたりして対応していきます。


ここからは圧入です。
打ち抜きの逆でベアリングを押し込みます。
ベアリングの外輪に工具を当ててねじ込みハンドルを回していきます。
ハンドルが重くなったところで圧入完了。
抜くときはベアリングを再使用しない前提なので内輪を押しても問題ないのですが、圧入時に内輪を押してしまうとボールとインナー、アウターが傷ついてしまう恐れがあるため、アウター(外輪)のみを押して圧入します。


ワッシャーの位置のメモ

ワッシャーの向きのメモ

アッパーアーム

リアのスイングアーム部分のベアリングを交換します。
アッパーアームとロアアームに別れており、上下アームの接続はホルストリンク(HORST PIVOT)を介しています。ここのベアリングを引っこ抜くのが大変でした。。。海外の情報も見当たらなく独自で頑張りました。

↓アッパーアーム
ロアアームはメインフレームから外せませんでした。このアッパーが作業の難所。


↓この部分がダブルベアリングになっており、表裏から圧入されてます。
ベアリング1個だと抜き取りと圧入が簡単なんですが、2個だとそもそもベアリングを押し出すための引っ掛かりが無いため、特殊工具がないと作業できないか、よく分からずにやって壊します。


そこで登場するのが内掛け式のベアリングプーラーです。
こんな感じで爪の部品を打ち込んで。


爪を広げるネジをねじ込み


引っ張るとベアリングが抜けてくるのですが、↓の方法だと樹脂が欠けたため中止。。。金属の引き抜き治具だと樹脂が負けてしまうようです
相手がエンジンブロックとかオートバイのホイールのような金属だとこれで抜けます。


ちょっと工夫してホームセンターで調達した塩ビパイプを使います。
ベアリングの外径よりパイプの内径が大きいものをチョイス


先程の内掛けの爪が引っかかっている部分をCクランプでソケットを挟み込んで押し出します。

こんな感じで抜けます。
2つのベアリングの間にはスペーサーが1枚挟まっていました。(↓の写真の黒いやつ)


1個抜けてしまえば残りは通常の打ち抜き方法でOKです。


圧入も通常手順でOKでした。

ロアアーム

フレームと接続されているメインのベアリングがロアアームに圧入されています。
ここだけベアリングのサイズが異なり、他の箇所より1サイズ大きいものが使われていました。

スイングアームを分離できれば作業が簡単なのですが、インナーケーブルを通すガイドケーブルがフレームからアームへと繋がっており、これを外したら復旧が大変そうなのでそのまま作業しました。

スペーサーを駆使して延長しまくって打ち抜き・圧入を実施して完了です。

作業メモ・感想

初めてのフルサスバイクのベアリング交換でしたがなんとかやり遂げました。
お店でやってもらうと5万円くらいでしょうか? 自分でやってみてそれくらいかかる気がしました。
部品代、消耗品で1万円 + 作業工賃で3万円~?

1台仕上げるのにあれこれ悩みながらやったので数日かかりました。
慣れてれば5時間もあれば終わりそうな作業内容です。

特殊工具は高価ですが、2台以上自分でやれば元がとれます。
もちろんプロショップには相応のノウハウあり、素人が同じように仕上げることはできませんが、構造を理解して自分なりに愛着を持ってバイクのメンテするっていいなって思います。

すべての方にオススメできるメンテではないですが、自分でやってみると達成感あります。満足度の高めの作業でした!
[おわり]

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