ターマック SL8 のチェーンに、噂のモルテンスピードワックス(Molten Speed Wax)を施行してみました。チェーンを脱脂して、溶かしたワックスに漬け込むだけ……と言いたいところですが、やってみると地味に手間がかかる工程や、ちょっとしたトラブルもちらほら。今回は施行の流れと、実際にやって分かった注意点を記録として残しておきます。
なぜワックスに手を出したのか
ワックスはオイル系の潤滑剤に比べて低摩擦・高効率で、しかも汚れを巻き込みにくいのが売り。路面の砂やホコリを抱き込まないので、ドライブトレインがとにかく汚れません。うっかりチェーンに触れて黒い汚れがつくことがかなりストレスでした。低摩擦とかは正直どうでも良いのですが、黒いドライブトレインを見なくて済むならありだなと思いました。
そしてもうひとつの決め手がコスト。Tarmacを購入して年間3000km以上走行してドラブトレイン周りの摩耗が気になるようになってきました。チェーンだけなら安いのですが、このまま行くといつかはカセットやチェーンリングの交換も必要になり、試しにランニングコストの比較をしてみたのですが、結論は「どの走行距離でもトータルではワックスの方が安い」というものでした。ワックス自体はルブより割高なのに、チェーンやカセットの寿命がぐっと延びるおかげで、消耗品代でしっかり元が取れてしまう。走る人ほど差が開きます。
「レース用の決戦仕様」「マニアの趣味」みたいなイメージでしたが、実は財布にもやさしい選択肢。それなら一度やってみるか、と重い腰を上げたわけです。
用意したもの
今回の施行で使った主な道具がこちら。


- モルテンスピードワックス(ゼータトレーディング取扱い)
- スロークッカー(アマゾンで購入したマリン商事製)
- 超音波洗浄器(シチズン製)
- チェーン(SLX、105相当の12sチェーン)
チェーンはあえて安いグレードを選びました。105相当の12sチェーンを3000円ほどで購入。コスト計算でも分かったとおり、ワックス運用ならチェーン寿命がかなり延びるはず。だったら高いチェーンを使わなくても十分もつのでは、という狙いです。ここは今後の耐久性で答え合わせをしていきます。
施行の手順は、ゼータトレーディングの公式サイトとYouTubeを参考にしました。
ワックスは1個で足りた

モルテンスピードワックスは1箱に2個入り。今回は1個だけで足りました。溶かした量を見るかぎり、けっこう長く使い回せそうな印象です。ワックスは固まっても再加熱して何度も使えるので、コスパは悪くなさそう。
脱脂中の超音波洗浄でチェーンが錆びた話

ワックス施行で一番大事なのが、前処理の脱脂。チェーンに残ったオイルやグリスを完全に飛ばさないと、ワックスがうまく乗りません。今回は取り外した古いチェーン(3500km使用)と新品チェーン、MTB用の合計3本をディグリーザーで洗い、IPAでリンスして超音波洗浄機に突っ込みました。この段階でかなり作業しており、面倒くさくなっていたこともあり「水」で3本を超音波しました。

ところがここで軽いトラブル。超音波洗浄のあと、チェーンが錆びていました。しかも錆びていたのは、洗浄器の中でチェーン同士が重なって接触していた部分だけ。
なぜ重なった部分だけ錆びたのか
最初は「もらい錆かな?」と思ったのですが、調べてみるとこれは物理的に起こるべくして起こった現象でした。理由はこんな感じ。(以下AIまとめ)
- 保護膜ゼロの状態:脱脂で油分を完全に飛ばした金属チェーンは、保護膜のない剥き出し状態。そこに水分が残ると一気に酸化が進みます。
- 隙間腐食:チェーン同士が密着した狭い隙間は、洗浄液が抜けにくく乾きにくい。隙間の内と外で酸素濃度に差が生まれ、腐食が進みます。
つまり「チェーンとチェーンの間で錆びた」のは偶然じゃなく、接触部に水分が滞留する構造そのものが原因。脱脂済みのチェーンを重ねて超音波にかけると、ごく普通に起こり得るトラブルなんですね。汚れはごっそり落ちましたが、うっすらサビが出てしまい逆に気になってしまいます。
結局そのままワックスを施行した
幸い、錆は表面にうっすら出た程度の軽い酸化変色レベル。なので特別な錆取りはせず、そのままワックスを施行しました。
プレートの側面しかサビは見られないので、内部は大丈夫だろうとの判断です(内部こそ金属が重なって錆びるのでは?とも思いましたが、気が付かなかったことに進めます。。。)
次回への対策はこの2点
今回の失敗から得た予防策はシンプルに2つ。
- 超音波洗浄器にチェーンを重ねて入れない。1本ずつ、または重ならないように吊るす・広げて入れる。接触部に水分が滞留しなければ隙間腐食は起きにくい。または、IPAとチェーンを袋に入れて直接水と触れないように超音波をかける。
- 脱脂後はIPA(イソプロピルアルコール)100%で最終リンス→強制乾燥。水分が残らず乾燥も速いので錆びにくい。エアダスターやコンプレッサーでローラー内部の水を吹き飛ばし、芯まで乾かすのが理想です。
完全脱脂が必須であるがゆえに状況によっては錆びさせてしまう。ワックス派が脱脂で一番やらかしやすいのが、この「脱脂後の水分残り」による錆。保護膜ゼロの金属は驚くほど簡単に錆びるので、脱脂からワックス施行までは水分管理を徹底したいところです。
チェーンのカットとワックス溶かし

私のバイク構成では116Lが必要なので、購入したチェーンをカットしてから施行します。

スロークッカーにワックスを入れて強の設定で加熱。新品のワックスは固形なので、溶けきるまでに1時間ほどかかりました。初回はそれなりに待ち時間があります。溶けたら90℃前後をキープしつつチェーンを漬け込み、揺らして細部まで浸透させます。(スロークッカー強で95℃以上になっていると判断しています。測っていません)

一晩放置でカチカチに
施行後、スロークッカーの中のワックスはそのまま放置すると当然固まります。一晩おいたらしっかり固体に。

そして吊して乾燥させたチェーンも、一晩でカチカチに。

バイクに取り付ける前にリンクをほぐす作業が必要になります。手袋をした手で1コマずつ動かして、各リンクがスムーズに曲がるようにほぐしていきます。
このとき、固着していた余分なワックスが剥がれてけっこうゴミが出ます。

バイク側のドライブトレインも洗浄する
見落としがちなのが、バイク側のドライブトレインの洗浄。せっかくチェーンをきれいにコーティングしても、スプロケットやプーリーが汚れたままだと、そこから「もらい汚れ」をしてしまいます。ワックスのクリーンさを活かすためにも、付け替えのタイミングでドライブトレイン全体をしっかり洗っておきます。

取り付け後は「変速せずに」慣らし運転
チェーンを取り付けたら、慣らし運転が必要です。ここもワックス施行で面倒なポイントかもしれません。公式手順では20分以上(気温によっては30分〜1時間)、しかもディレーラーを動かさず=変速せずに慣らすこととされています。

変速せずに20分以上走り続けるのが屋外だとなかなか厳しい。ですが、ここでスマートローラーが活躍します。自動で負荷が変わるので、ギアを変えずにトレーニングしながら、そのまま慣らし運転まで完了できる。ワックス派とはかなり相性のいい組み合わせだと思います。
スマートローラーがない場合は、低速ギアで平坦をゆっくり走り回るか、メンテスタンドに乗せて手でクランクを回すか。いずれにしても面倒です。
慣らし中はワックスがポロポロ落ちる
慣らし運転中、剥がれた余分なワックスがポロポロと落ちてきます。これは想定外でした。触っても手は汚れないのですが、床は汚れます。室内でローラーを回す場合は、下に新聞紙やマットを敷いておくのが無難です。
スロークッカーの仕様
今回使ったマリン商事のスロークッカー(型番 Ki-20015)の仕様をまとめておきます。ワックス施行には十分すぎるくらいで、何より安いのがありがたいところ。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| メーカー/型番 | マリン商事 Ki-20015 |
| 呼び容量(満水) | 1.5L |
| 調理容量 | 0.5〜1.2L(内鍋の3〜8分目) |
| 消費電力 | 強:120W/弱:80W/保温:80〜120W |
| 温度 | 強:98.6℃/弱:90℃/保温:90〜98.6℃ |
| 本体サイズ | 約 高さ20×幅24×奥行21cm |
| 内釜サイズ | 約 深さ10×上方内径14.5×底面内径12cm |
| 重量 | 約2kg |
| 電源 | AC100V |
| 購入先 | Amazon |
ワックスを溶かすのに使う「強」設定で約98.6℃。モルテンスピードワックスの推奨は90℃前後なので、温度を見ながら強・弱を使い分けるとちょうどよくコントロールできます。
ライディングインプレッションは今後追記
肝心の走行時のチェーンのスムーズさや、ワックスの耐久性については、これから走り込んで検証していきます。ワックスは500〜800km程度で再施行が目安。どのくらいの距離で効果が落ちるのか、安グレードのチェーンがどれだけもつのか。コスト計算の「答え合わせ」も兼ねて、追って追記していく予定です。
まとめ
- ターマック SL8 用に105相当の12sチェーン(3000円)を購入し、モルテンスピードワックスを施行
- ワックスは2個入りのうち1個で足りた。長く使い回せそう
- 新品ワックスは溶かすのに1時間ほど。スロークッカー(強)で加熱
- 取り付け後は変速せずに20分以上の慣らし運転。スマートローラーなら自動負荷で慣らしまで完結
- 慣らし中はワックスがポロポロ落ちて床が汚れるので要対策
- スムーズさ・耐久性は今後追記
手間はかかりますが、ローラー慣らしまで含めてルーティン化できれば、そこまで苦じゃなさそうです。オイル汚れが発生しないメリットもあり、コスト面でも勝算はあるので、あとは実走でのフィーリング次第。楽しみです。

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